BioPQQ®は、PQQ(ピロロキノリンキノン)を安全かつ効率的に摂取できるよう、2008年に三菱ガス化学が開発した食品で、PQQの水溶性塩として微生物から発見された物質です。多くの研究から、ヒトの体内で重要な役割を担う栄養素であることが示されています。
この記事では、PQQが私たちの体の中でどのような働きをしているのかを詳しく紹介いたします。またPQQはどのような食物に含まれているのかを解説していきます。
PQQは酵素の働きを助ける「補」酵素
私たちの体の中では常に複雑な化学反応が起き続けています。神経細胞が情報を伝えたり、食べたものを消化したり、細胞が分裂して増えたり、遺伝子のスイッチのオン・オフを調節したりなど、数え上げたらきりがありません。
それらの化学反応の多くを担っているのが、酵素です。酵素は複雑な形をしたタンパク質で、体内には多くの種類の酵素が存在します。
さらに、酵素の働きを調節するのが「補酵素」です。
補酵素は酵素に比べると小さな分子で、酵素に結合したり離れたりすることで、酵素の働きを調節します。補酵素が体内に存在しないと、正しい化学反応を起こせなくなり、病気が引き起こされます。そのため、体内で合成できない補酵素は、食物などから取る必要があります。
たとえば、葉酸はDNAの合成を助ける補酵素です。妊娠の初期に不足していると、胎児の成長に支障が出る場合があります 1) 。ビタミンB6はアミノ酸を分解して神経伝達物質を作る反応などに必要な補酵素で、欠乏するとうつ状態やけいれん発作などの症状を生じることがあります1)。
PQQの正式名称はピロロキノリンキノンで、ミトコンドリアがエネルギーを作り出す反応を助ける補酵素です。
ミトコンドリアの機能は加齢とともに衰え、その機能低下が老化現象2)3)や腫瘍の進行4)、自然免疫応答5)、メタボリックシンドローム6)に関わっていると考えられており、ミトコンドリアの働きを助けることができる物質は、老化を防ぐことができるのではないかと期待されています。PQQは初めて聞いたという人も、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)なら聞いたことがあるかもしれませんが、NMNもPQQと同様、ミトコンドリアに関係の深い補酵素です。
NMNもPQQもミトコンドリアを増加させると考えられています。ただ、培養細胞を使ったデータでは、PQQの方がはるかに低い濃度で反応を起こすことができることが示されており7)、食品として摂取した場合は、PQQの方が効率的にミトコンドリアを増加させることができます。
人の体に存在するが合成はできない―PQQはビタミンなのか
ビタミンと聞くと健康に良さそうなイメージが浮かびます。ビタミンとは、「微量で生命維持を支配する不可欠な有機物であり、体内でほとんど合成されないか、合成されても必要量に満たないために必ず外界から摂取しなくてはならない栄養素」と定義されています7)。
2003年に理化学研究所の笠原博士と加藤博士は、PQQが新種のビタミンの可能性があるという研究結果を英国の科学雑誌『Nature』に発表しました8)。この研究では、微生物から見つかったPQQが、健康に重要な働きをしていることがわかりました。PQQを含まないエサをネズミに与えると、生育が悪くなったり、皮膚がもろくなったりなど、健康上の異常が観察されたのです。PQQを必要とする酵素はヒトにも存在していることから、PQQがヒトの新たなビタミンであるという仮説が提唱されました。
現在、PQQがビタミンであるということまでは証明されていませんが、人の健康にとって大切な働きをしていることは多くの研究者が認めています。今後、PQQがヒトのビタミンの仲間入りをするのかどうか、注目したいところです。
PQQはさまざまな食品に含まれている
PQQは、体内のいろいろなところに存在していることがわかっています9)。ただ、ヒトの体はPQQを合成することはできないため、食品を通してPQQを摂取しているのです。
1gあたり、または1mlあたりに含まれているPQQの含有量を表にまとめてみました 10) 。
食品中のPQQ含有量
野菜・果物(ng/g) | 飲料(ng/ml) | 発酵食品(ng/g) |
パセリ 34.2±11.6 | 紅茶 29.6±12.9 | 納豆 61.0±3.6 |
ピーマン 28.2±13.7 | ウーロン茶 27.7±1.9 | 豆腐 24.4±12.5 |
キウイフルーツ 27.4±2.6 | ウイスキー 7.9±1.8 | 味噌 16.7±3.3 |
パパイヤ 26.7±8.6 | ワイン 5.8±2.7 | パン 9.1±3.6 |
ホウレンソウ 21.9±6.2 | 日本酒 3.7±1.4 |
上表中で最もPQQ含有量が多い食品は納豆です。納豆が苦手な人は2番目に多いパセリに注目したかもしれません。これは1gあたりに含まれている量ですから、実際に私たちが食事として摂る量に概算して比べてみましょう。
PQQを多く摂取できそうな順に並べて、さらにマイクログラムに換算してみました。(上表中の数値はナノグラム。標準誤差は省略)
- 緑茶 1杯(200ml)
- 6.0μg
- ウーロン茶 1杯 (200ml)
- 5.5μg
- 納豆1パック(50g)
- 3.1μg
- キウイ1個(100g)
- 2.7μg
「μg(マイクログラム)」というのは、非常に小さな単位です。1μgは、1000分の1mgです。ちなみに1ng(ナノグラム)は1000分の1μgで、100万分の1mgです。
BioPQQ®の健康機能を評価した臨床試験では、1日あたり20mgのBioPQQ®の摂取で、脳機能維持につながることが分かっています。同じ効果を普通の食事から得るためには、ウーロン茶を約3636杯飲むことになってしまいます。それに対し、BioPQQ®が配合されたサプリ等を飲む場合、無理なく有効量を摂取することができます。BioPQQ®20mgを24週間飲み続けた臨床試験では、人体への毒性は確認されず、その他数多くの試験結果から安全性が確認されています。また、BioPQQ®は10年以上にわたり販売されていますが、健康被害は報告されていません。
人生100年時代を健やかに過ごすために、BioPQQ®の機能にぜひ注目してみてください。
参考文献
1) 日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
2) Kevin R. Short, Maureen L. Bigelow, Jane Kahl, Ravinder Singh, Jill Coenen-Schimke, Sreekumar Raghavakaimal, and K. Sreekumaran Nair (2005) Decline in skeletal muscle mitochondrial function with aging in humans PNAS 102, (15), 5618-5623
3) Michael T Lin, M Flint Beal (2006) Mitochondrial dysfunction and oxidative stress in neurodegenerative diseases Nature, 443 (7113), 787-795
4)Ohsawa S, Sato Y, Enomoto M, Nakamura M, Betsumiya A, Igaki T.(2012) Mitochondrial defect drives non-autonomous tumour progression through Hippo signalling in Drosophila. Nature 25;490(7421):547-51.
5) A. Phillip West, William Khoury-Hanold,Matthew Staron, Michal C. Tal,Cristiana M. Pineda, Sabine M. Lang, Megan Bestwick, Brett A. Duguay,Nuno Raimundo,Donna A. MacDuff, Susan M. Kaech, James R. Smiley, Robert E. Means,Akiko Iwasaki, Gerald S. Shadel (2015) Mitochondrial DNA Stress Primes the Antiviral Innate Immune Response Nature. 520(7548): 553–557.
6) Saxena R, de Bakker PI, Singer K, Mootha V, Burtt N, Hirschhorn JN, Gaudet D, Isomaa B, Daly MJ, Groop L, Ardlie KG, Altshuler D.(2006) Comprehensive association testing of common mitochondrial DNA variation in metabolic disease. Am J Hum Genet;79(1):54-61.
7)厚生労働省実践的指導実施者研修教材 食生活改善指導担当者研修「食生活改善指導担当者テキスト」平成20年3月
8) Kasahara T, Kato T.(2003) Nutritional biochemistry: A new redox-cofactor vitamin for mammals. Nature. Apr 24;422(6934):832
9) Kumazawa T, Seno H, Urakami T, Matsumoto T, Suzuki O (1992) Trace levels of pyrroloquinoline quinone in human and rat samples detected by gas chromatography/mass spectrometry. Biochim Biophys Acta 1156, 62-66
10) Kumazawa T, Sato K , Seno H,Ishii A , Suzuki O (1995) Levels of pyrroloquinoline quinone in various foods Biochem J 307:331-3