PQQコラム

【研究紹介】BioPQQ®がコロナウイルス感染を防ぐメカニズムを解明

感染症を予防するには、体内の免疫機能を高めることが重要です。
BioPQQ®はミトコンドリアを活性化する食品素材ですが、ミトコンドリアの働きは免疫機能とも関わりが深いことが知られています(関連記事:ミトコンドリアと免疫機能)。

しかしながら、BioPQQ®が感染症に対してどのような作用をもつのかは、まだ詳しく知られていません。
そこで、三菱ガス化学では、BioPQQ®がコロナウイルスに対してどのような作用を発揮するかを調べ、そのメカニズムを解明しました1) 2)

この記事では、研究内容とBioPQQ®の抗ウイルス作用について、分かりやすくご紹介します。

ウイルスが体の中で増える仕組み

感染症の原因となるウイルスは、人の体の中に侵入すると細胞の膜に取りついて中に入っていき、細胞内で増殖を開始します。
そして、多くのウイルスは細胞の中で増殖した後に細胞を殺して外へ出て、他の細胞の中に侵入し、また増えていきます。

ウイルスが体の中で増えていくと、細胞が次々に死んで、体の機能が損なわれてしまいます。そうならないために、私たちの体にはウイルスと戦う仕組みを備えています。それが免役システムです。
主に血管の中を流れる白血球が、外からの侵入者と戦っています。

BioPQQ®はPQQを原料とする食品素材ですが、さまざまな健康上の利点を持つことが複数の研究から示されています。
たとえば、ミトコンドリアを活性化して、脂肪の蓄積を抑制したり脳の認知機能を維持したりすることが、これまでの研究で分かってきました。

さらに、PQQには、ウイルスの感染や増殖を防ぐ抗ウイルス作用を持つ可能性が示されています。
三菱ガス化学では、その可能性とメカニズムを詳しく検証するために、実際にウイルスと培養細胞を使って実験を行い、PQQが抗ウイルス作用を持つかどうかを調べました。
研究グループが用いたのは、コロナウイルスの一種であるネココロナウイルスです。
ヒトに感染する新型コロナウイルスに似た構造をしていることや、ヒトに感染しないため安全に実験できることから、このウイルスが選ばれました。

PQQはウイルスを凝集させて感染を抑制する

まず研究グループは培養細胞にPQQとウイルスを加え、細胞にどのくらいウイルスが感染するかを調べました。
その結果、PQQをあらかじめ加えておいた細胞では、ウイルスの感染が抑制されることが示されました(図1)。

PQQがどのような仕組みでウイルス感染を抑制したのか検証するために、研究グループは、ウイルスのサイズを測定しました。
その結果、通常は 86 nm であったウイルスの平均サイズがPQQを加えた場合では 149 nm に変化していました。これはウイルスが複数集まって凝集している可能性を示しています。

本当にウイルスが凝集しているかどうかを確かめるために、ウイルスとPQQを混合した溶液を異なるサイズの穴(0.45µmまたは 0.20µm)が開いた2種類の膜でろ過しました。
ウイルスがバラバラに存在している場合は、小さい穴を通過できますが、複数のウイルスが凝集して 0.20 μm より大きくなっている場合は、膜を通過せず、ろ液の中のウイルスは減ることになります。

膜を通過したウイルス量を測定した結果が図2です。棒グラフは、測定したウイルスの量を表しています。
PQQを加えた場合は、0.20 μm の穴がある膜を通過したウイルスの量が大幅に減ることが分かります。
これにより、PQQはウイルスを凝集させ、それによって感染を抑制している可能性が強く示されました。

PQQはウイルスの殻を破壊し、複製を助ける酵素を阻害する

次にPQQがウイルス粒子を破壊する可能性を調べるために、ウイルスにPQQを加えて培養しました。その結果が、図3です。

図3の縦軸はウイルスの生存率を表しています。左から2番目は、ウイルスに熱を加えた場合です。
熱を加えるとタンパク質でできたウイルスの殻が変形し、ウイルスは壊れて生存率が大幅に低下しました。

PQQを加えた場合、1時間では大きな変化はありませんでしたが、4時間後(一番右)はウイルスの生存率が低下しました。

PQQはウイルスを凝集させるだけでなく、ウイルスの生存率も下げることが分かりました。
この効果は、ビタミンCの成分であるアスコルビン酸と、うまみ成分のグルタミン酸を加えることで、さらに有効に働くことも実験によって示されました。

細胞内に侵入したウイルスは、細胞の中にある酵素やタンパク質などを使って自身を複製します。「Mpro」と呼ばれる酵素は、新型コロナウイルスやネココロナウイルスなどを含むいくつかのコロナウイルスの複製に重要な役割を果たします。

研究グループは、実験によって、PQQがMproの活性を低下させることも確かめました。
つまり、PQQは細胞内に侵入するのを防ぐだけでなく、細胞の中に侵入された場合にも増殖を防ぐ可能性が示されたのです。

PQQは複数の働きで抗ウイルス効果を発揮する

研究グループによって提案されたPQQの抗ウイルス効果のメカニズムをまとめると、次のような図になります。

まず、PQQがウイルスに作用し、ウイルスの殻にダメージを負わせ凝集を引き起こします(①)。その結果、凝集したウイルスは細胞の中に入れなくなります(②)。さらに細胞内に侵入したウイルスは、PQQが複製に関わる酵素をブロックするため(③)増殖が抑制されることが示されました。

今回の結果は、培養細胞を用いた実験をもとにしているため、健康食材として口から摂取するBioPQQ®が人の体の中で同様の効果を発揮するかどうかは、まだわかりません。
しかしながら、この研究によって、PQQの新たな可能性が開かれたことは確かです。

脂肪の蓄積抑制認知機能の維持などに加えて、感染症の予防にも役立つ可能性が示されたことで、PQQが健康をサポートできる場面は広がりました。
三菱ガス化学は今後もPQQの可能性を追究してまいります。

参考

1) 三菱ガス化学ニュースリリース2023年11月17日 「BioPQQ®の抗ウイルス作用に関するメカニズムを解明

2) Nur Syafiqah Mohamad Ishak, Tomoe Numaguchi, Kazuto Ikemoto (2023) Antiviral Effects of Pyrroloquinoline Quinone through Redox Catalysis To Prevent Coronavirus Infection, ACS Omega 8, 47, 44839–44849

この記事に関するご意見、その他BioPQQ®に関するお問い合わせはこちらから

医療従事者様・企業様お問い合わせ