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ミトコンドリアの機能が低下すると何が起こるのか

ミトコンドリアは私たちが生きるためになくてはならない重要な器官です。
ミトコンドリアの機能が衰えると、さまざまな健康上の問題を起こす可能性があることが知られています。

この記事では、ミトコンドリアの機能が低下する原因と、それによって何が起こるのかをご紹介します。

ミトコンドリアの機能低下で起こる「ミトコンドリア病」

私たちの生命活動を支えるミトコンドリアは、赤血球を除くすべての細胞に存在しています。
ミトコンドリアはエネルギーを生み出すだけでなく、アポトーシスと呼ばれる細胞死や、細胞での複雑なシグナル伝達においても重要な役割を果たしています
そのため、ミトコンドリアの機能が著しく低下すると、細胞が正しく働けなくなり、さまざまな臓器の機能に異常が起きる可能性があります。

ミトコンドリアに問題が生じた結果、さまざまな臓器に症状を示すようになる病気が「ミトコンドリア病」です。
ミトコンドリア病はミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変異を生まれつき持っている人に発症する病気の総称です1)
多くの場合、家族性の遺伝ではなく、突然変異によって現れます。患者数が少なく、現在のところ、根治的な治療法はありません。

出典:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経・筋疾患患者登録サイトRemudy 「ミトコンドリア病とは」2)

ミトコンドリア病の症状の多くはエネルギー産生不足によるものです。
そのため、大量のエネルギーを必要とする脳や筋肉、消化器、心臓などに症状が現れやすいことが知られています。
細胞の働きはそれぞれ違うため、エネルギー不足によって現れる症状もさまざまです。
けいれんや脳卒中、物が見えにくい、疲れやすい、運動ができない、筋力低下、糖尿病、貧血など1)現れる症状の多様さがミトコンドリアの働きの重要さを物語っています

加齢がミトコンドリアの数を減らし、機能を低下させる

ミトコンドリアの機能が低下する原因は、遺伝子の変異だけではありません。
加齢によっても、ミトコンドリアの機能は低下します3)

加齢によるミトコンドリア機能の低下の原因のひとつとして考えられているのが、体内で作られるNADの減少です。
NADはミトコンドリアを作るための反応に必要な物質で、加齢とともに減っていくことが動物実験4)やヒトの研究5)で確かめられています。

ミトコンドリアを作り出す反応は複数の経路がありますが、NAD+を介する経路には、長寿遺伝子とも呼ばれる「サーチュイン遺伝子」が関わっています。

サーチュインはPGC-1αを介してミトコンドリアの生合成を誘導します
そして、サーチュインが働くためにはNAD+ が必要なのです。

上図からNAD+が減ると、ミトコンドリアの生合成が起こりにくくなることがわかります。
また、新しいミトコンドリアが作られにくくなるとミトコンドリアの質が悪くなり、ミトコンドリアの機能も低下してしまいます。

生活習慣病にも関係するミトコンドリアの機能低下

加齢にともなうミトコンドリアの減少も、さまざまな病気や健康状態に関係している可能性があると考えられています3)

以下のイラストに挙げているのは、環境や遺伝、生活習慣など、複数の原因が関わって発症する病気ですが、発症の原因のひとつにミトコンドリアの機能低下も関係していると考えられ、研究が進められています3)

加齢は誰にでも起こる現象です。私たちは年齢とともにミトコンドリアの機能が低下して、病気のリスクが高まっていくのを、ただ眺めていることしかできないのでしょうか。

あきらめてしまうのは、まだ早いかもしれません。
運動やカロリー制限、機能性食品の摂取など、特定の生活習慣を取り入れることで、ミトコンドリアの生合成を活性化できる可能性があることが、数々の研究によって示されているからです。
(関連記事:ミトコンドリアを増やす方法)。

いつまでも若々しく健康でいたい方は、ぜひ、ミトコンドリアの働きと今後の研究成果に注目してみてください。

参考

1) 難病情報センター ミトコンドリア病
https://www.nanbyou.or.jp/entry/194

2) 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経・筋疾患患者登録サイトRemudy「ミトコンドリア病とは」http://www.remudy.jp/mitd/about_md/index.html

3) Chowanadisai, W., Shenoy, S. F, Sharman, E., Keen, C. L, Liu, J., & Rucker, R. B. (2011). Well-functioning cell mitochondria promote good health. California Agriculture, 65(3).

4) Yoshino J, Mills KF, Yoon MJ, Imai S. (2011) Nicotinamide mononucleotide, a key NAD(+) intermediate, treats the pathophysiology of diet- and age-induced diabetes in mice. Cell Metab;14(4):528-36.

5) Massudi H. Grant R. Braidy N. Guest J. Farnsworth B. Guillemin G.J. (2012) Age-associated changes in oxidative stress and NAD+ metabolism in human tissue. PLoS ONE; 7: e42357 C

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