PQQコラム

ミトコンドリアとは何か
健康のために知っておきたい基礎知識

ミトコンドリアは、細胞の中に存在する小さな器官です。
細菌のような核をもたない原始的な生物を除いて、ほとんどの生物がミトコンドリアをもっており、ミトコンドリアの働きのおかげで、ミトコンドリアを持たない生物よりも複雑な生命活動を行うことができています。

最近では健康増進の観点から、ミトコンドリアの働きが注目されることも増えてきました。
この記事では、そんなミトコンドリアの性質や働きについて詳しくご紹介します。

ミトコンドリアはどこで何をしているのか

生物の体は細胞で構成されてます。細胞の中には生物が生きるために必要ないろいろな器官が備わっていますが、これらは「細胞小器官」と呼ばれ、ミトコンドリアも細胞小器官のひとつです

下のイラストは動物細胞の代表的な細胞小器官を表したものです。DNAを守る核や、細胞内の輸送に関わるゴルジ体、不要なものを消化するリソソームなどに混じって、複数のミトコンドリアが存在しています。

イラストでは数個のミトコンドリアしか描かれていませんが、ヒトの細胞には、細胞1個につき約100~2000個ほどのミトコンドリアが存在すると推定されています1)

また、ミトコンドリアはよく楕円形の粒のような形で描かれますが、これは死んだ細胞を輪切りにしたときに観察できる姿で、生きた細胞の中では融合と分裂を繰り返し、網のように細胞内に広がっていることが最近の研究で明らかになっています2)

ミトコンドリアは外膜と内膜の2つの膜で構成されています。内膜は内側に折り込まれ、クリステというひだ状の構造を作っています。このような構造をとることで表面積が増え、より多くの反応を起こしやすくなっています。内膜に囲まれた部分はマトリックスと呼ばれます。

ミトコンドリアは、このような構造を利用して、細胞が活動するためのエネルギー「ATP」を作り出しています。内膜やマトリックスには、ATPを作り出す反応に必要な、さまざまな分子が存在しています。

細胞が働くためにはATPが必要

私たちはお腹が空いたら食事をします。
口から入った食物は胃などで消化され、小腸で吸収された後、血液を通って全身の細胞に運ばれます。そのあとはどうなっていくのでしょうか。

実は、細胞は、血液から渡された栄養分をそのまま利用することはできません。
細胞が活動するためには、栄養分をさらに小さく分解して、細胞が使えるエネルギーを取り出す必要があるのです。

細胞が使えるエネルギーを電力にたとえてみましょう。
発電所では石油や石炭を燃やしたり、水力や風力でタービンを回したりして、燃料や自然の力を電力に変換します。

電力として供給されて初めて、私たちはさまざまな活動を行うことができます。
石油をそのまま渡されても、暖をとるくらいしか使い道が思いつかないかもしれません。

細胞も同じです。糖や脂肪という「燃料」から「電力」のような細胞のさまざまな反応に使えるエネルギーを取り出します。
取り出したエネルギーは、その場で使い切ってしまっては困るので、必要な場所で必要なときに使えるようにATPという「電池」に溜めておきます

ATPはエネルギーを受け渡したあとは、ADPという物質になります。

そして再び「充電」されてATPになります。

ATPは細胞が活動するためのエネルギーです。
私たちの生命活動はすべて細胞の働きによって支えられているため、ATPは生きていくために欠かせない物質です。

では、ATPはどのように作られるのでしょうか。

ATPを大量に生み出すミトコンドリアの働き

ミトコンドリアは、食事によって得られるブドウ糖と、呼吸から得られる酸素を使って、ATPを作り出します。ミトコンドリアは、酸素を使ってブドウ糖1分子から36個のATPを生産することができます
このように酸素を使ってエネルギーを発生する仕組みを「好気呼吸」と言います。

一方、わたしたちの細胞はミトコンドリアの力を借りずにエネルギーを作り出すこともできます。これは酸素を使わないため、「嫌気呼吸」と呼ばれます。無酸素運動という言葉を聞いたことがあると思いますが、激しい運動をしたときに嫌気呼吸が起こります。

ところが、嫌気呼吸ではブドウ糖1分子から2個のATPしか作り出すことができません
ミトコンドリアを経由することで合計38個のATPができるのです。

もし、ミトコンドリアが働かなくなってしまったら、私たちの体はたちまちエネルギー不足に陥ってしまうのです。

ミトコンドリアは、赤血球を除くすべての細胞に存在しています。特に、脳や心臓など、大量にエネルギーを使う部位の細胞には多く存在しています。

生命活動の源ともいえるミトコンドリアは運動やサプリメントの摂取などでも活性化できることが知られています。日々の健康のため、ミトコンドリアに詳しくなってみてはいかがでしょうか。

参考

1)厚生労働省 e-ヘルスネット「ミトコンドリア」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-054.html

2)林純一『ミトコンドリア。ミステリー 驚くべき細胞小器官の働き』2002年(講談社ブルーバックス)

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