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睡眠の悩み別に考える、意識して摂りたい食品成分とその科学的根拠

厚生労働省の「国民健康·栄養調査」によると、約5人に1人が「睡眠で休養が十分に取れていない」と感じていることが報告されています1)睡眠を整えるうえで基本となるのは生活習慣の見直しですが、食品に含まれる成分の中には、睡眠の質をサポートする機能の研究が行われ報告されています。

本コラムでは、睡眠の悩みをタイプ別に整理し、それぞれに関連が報告されている食品成分とその科学的根拠を紹介します。

※長期間にわたり不眠が続き、日中の強い眠気や気分の落ち込みなど生活に支障が出ている場合は、自己判断せず医療機関に相談することをおすすめします。

眠れない悩みは4つに分けられる

ひとことで「眠れない」といっても、その内容は人それぞれです。寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、十分な時間寝たはずなのに熟睡した感じが得られない――。睡眠のどこに問題を感じているのかによって、背景や対策は異なります。

不眠症の診断では、主に次の3つの症状が評価され、さらに「熟眠感」があるかどうかも大切なポイントになります。

  • 入眠障害:寝つきが悪い
  • 中途覚醒:夜中に何度も目が覚める
  • 早朝覚醒:早朝に目が覚め、その後眠れない
  • 熟眠障害:ある程度の時間眠っているのに、ぐっすり眠れた感じが得られない

これらの症状は重なり合うことも多いものの、背景となる生理的要因は必ずしも同じではありません。入眠障害では脳が興奮したままの「過覚醒」が関係し、早朝覚醒では体内時計の変化が影響することが指摘されています。いったん自分のタイプを整理してみることが、対策を選ぶうえで役立ちます。

睡眠は生活習慣や心理状態など、さまざまな要因が重なって成り立っています。その一部に働きかける可能性があるものとして、食品成分の研究も行われています。作用の仕組みや効果の大きさについては、まだ検討が続いている段階のものもありますが、一定の科学的報告が積み重ねられてきた成分もあります。食品は日常生活の中で無理なく取り入れやすく、睡眠を整える一つの手がかりになり得ます。

本コラムでは、科学的な知見を踏まえながら、睡眠の悩みに応じた食品成分の可能性について紹介していきます。

睡眠の悩み①寝つきが悪い(入眠困難)

布団に入ってからなかなか眠れない。体は疲れているはずなのに、頭だけがさえてしまう。こうした、眠りに入るまでに時間がかかる背景のひとつとして考えられているのが、「過覚醒」と呼ばれる状態です。ストレスや緊張が続いていると、脳や自律神経が休息モードに切り替わりにくくなります。

生活面での対策としては、光や生活リズムを整えること、就寝前の刺激(動画やSNSなど)を避けること、カフェインを控えること、日中に適度に体を動かすことなどが基本になります。

寝つきの悪さに関しては、こうした過覚醒の状態を和らげる可能性がある食品成分がいくつか研究されています。

GABA

GABA(γ-アミノ酪酸)は、私たちの体内でつくられる神経伝達物質で、神経の興奮を抑える方向に働きます。脳内では主要な抑制性神経伝達物質として重要な役割を担っています。

一方で、食品として摂取したGABAがどのように作用するのかについては、まだ議論が続いています。GABAは血液脳関門を通過しにくいと考えられており、近年は腸と脳の相互作用などを通じた可能性も検討されていますが、その詳細なメカニズムは明確にはなっていません。

臨床研究では、GABAの摂取によって入眠潜時(寝つくまでの時間)が短縮したことや、ノンレム睡眠の時間に変化がみられたことが報告されています2)また、複数の研究をまとめたシステマティックレビューでは、数日間にわたる反復摂取が睡眠の初期段階に影響し、入眠潜時を短縮する可能性があるとされています。ただし、対象となった研究の数や規模は限られており、さらなる検証が必要と結論づけられています3)。同じレビューでは、GABAがストレス指標を低下させる可能性も示唆されています。寝つきの改善は、直接的な神経作用というよりも、ストレス軽減を介した効果である可能性も考えられています。

ストレスが続いていると感じている人にとっては、一つの選択肢になり得るかもしれません。同時に、日常生活の中でストレスの原因を見直すことも大切です。

トリプトファン

トリプトファンは、メラトニンの材料となる必須アミノ酸です。体内ではセロトニンを経てメラトニンへと変換され、睡眠と覚醒のリズムに関わっています。

トリプトファンの摂取と入眠時間の短縮との関連を示した研究はありますが、大規模で一貫したエビデンスが十分にそろっているとはいえません。トリプトファンは通常の食事からも摂取され、セロトニンの合成にも使われるため、サプリメントとして追加摂取した場合の純粋な効果を評価することは容易ではありません。

ヒト試験では、一部の入眠困難者において入眠潜時(寝つくまでの時間)が短縮したとの報告があります4)ただし、これらの研究は1980年代に行われたものが多く、近年の系統的レビューでは、睡眠の質の改善や中途覚醒(WASO)の短縮が示唆される一方で、入眠潜時への効果は研究条件によって一貫しない可能性があるとまとめられています5)

トリプトファンが入眠に影響する理由としては、睡眠ホルモンであるメラトニンの材料になる点が挙げられます。では、材料ではなくメラトニンそのものを摂取すればよいのではないか、と考える方もいるかもしれません。実際にメラトニンについては多くの研究が行われており、メタ分析では睡眠障害患者において入眠潜時を短縮する効果が示されています6)。ただし、メラトニンは海外ではサプリメントとして販売されていますが、日本では医薬品成分に分類されており、使用にあたっては医師の判断が必要です。

L-テアニン

L-テアニンは緑茶に含まれるアミノ酸で、リラックスを促す作用が報告されています7)脳の興奮をやわらげる可能性があることから、不眠の背景にある「過覚醒」を整える成分として研究されています。一方で、睡眠の構造そのものを大きく変える作用が確立しているわけではありません。

健康な成人30名を対象にした二重盲検·プラセボ対照試験では、L-テアニン(200mg/日)を4週間摂取した群で、主観的な睡眠の質やストレス関連指標の改善が報告されました8)一方で、客観的な睡眠指標の変化は限定的でした。このことから、テアニンは強い催眠作用を示す成分というよりも、ストレスの緩和を通じて睡眠をサポートする可能性があると考えられています。

睡眠の悩み②途中で目覚める(中途覚醒)

夜中に目が覚めることを中途覚醒といいます。ただし、目が覚めてもすぐに再び眠りに戻れるのであれば、必ずしも問題とはいえません。無自覚で覚えていない短い覚醒も含めれば、多くの人が睡眠中に中途覚醒を経験しています。

ただし、目が覚めたあとに再び眠れなくなると、心身の負担となり、睡眠時間も短くなります。覚醒が頻繁に起こると睡眠の連続性が損なわれ、睡眠の質が低下することもあります。

中途覚醒の背景としては、まず加齢による睡眠構造の変化が挙げられます。入眠困難と同様に、ストレスや過覚醒も関与します。また、睡眠中は体の中心部の温度(深部体温)が夜間に向かって低下するリズムを示します。この体温リズムが保たれていることが、睡眠の維持に関係し、深部体温の変動が乱れると、覚醒が起こりやすくなることが知られています。

中途覚醒に関連する食品成分としては、深部体温の調節に関わるグリシンや、睡眠の連続性を高める可能性が示唆されているクロセチンが挙げられます。

グリシン

中途覚醒の防止をサポートする成分として注目されているのがグリシンです。グリシンはアミノ酸の一種で、食品からも摂取できます。

睡眠の質が良くないと感じている30~57歳の成人11名を対象としたヒト試験では、就寝前に3gのグリシンを摂取したところ、主観的な睡眠の質や睡眠効率の改善、日中の眠気の軽減が報告されています9)

作用の仕組みは完全には解明されていませんが、グリシンが末梢血管を拡張させ、熱放散を促すことで深部体温の低下を助け、その結果として睡眠の維持に関与している可能性が考えられています。

クロセチン

クロセチンは、サフランに含まれるカロテノイド成分です。鮮やかな黄色の色素として古くから食品にも利用されてきました。

軽度の睡眠の悩みがある健康な成人男性21名を対象に行われた二重盲検·プラセボ対照クロスオーバー試験では、クロセチン摂取後に、プラセボと比較して夜間の覚醒回数が減少したことが報告されています10)また、クロセチンを含むサフラン抽出物を66名の被験者に6週間摂取してもらった無作為化二重盲検試験では、入眠のしやすさや睡眠の質、睡眠時間などの主観的な睡眠スコアに全般的な改善がみられました11)

これらの研究から、クロセチンは睡眠の連続性を整える方向に作用する可能性が示唆されています。ただし、研究規模はまだ大きいとはいえず、作用の仕組みについても今後の検討が必要です。

悩み③ 早朝に目覚める(早朝覚醒)

年齢を重ねると、睡眠と覚醒のリズムは少しずつ前にずれていく傾向があります12)若い頃よりも早い時間に眠くなり、早い時間に目が覚めやすくなるのは、体内時計(概日リズム)の変化が関係していると考えられています。

対策としては、眠れない不安から就寝時刻を必要以上に早めすぎないことが大切です。あまりに早く床に就くと、体内時計が前倒しになり、目覚める時刻もさらに早まってしまう可能性があります。

早朝に目が覚めても、すぐに活動を始めるのではなく、まずは布団の中で落ち着いて休みましょう。焦らずに横になっているだけでも休息になります。ただし、はっきりと目が覚めてしまい、眠気が戻らない状態が続く場合は、いったん起きて静かな行動をとるほうがよいこともあります。

食品との関係については、睡眠ホルモン「メラトニン」の合成に関わる栄養素(トリプトファンやビタミンB6など)や、メラトニンを含む食品の研究が進められています。

ただし、早朝覚醒そのものをはっきり改善したといえる十分なエビデンスは、現時点では多くありません。そのため、生活リズムや光環境の調整が基本となりますが、メラトニン合成に関わる栄養素を整えることは、体内リズムを支える一助となる可能性があります。

悩み④ 熟睡できていない

「ぐっすり眠れた」という感覚(熟眠感)は、とても主観的なものです。客観的に測定した睡眠の深さと、本人の感じ方が必ずしも一致するとは限りません。

参考: 睡眠の質はどうやって測るのか

熟眠感は、深い睡眠(徐波睡眠)の量とある程度関連するとされていますが、それだけで決まるものではありません。睡眠の連続性や夜間覚醒の有無、さらには心理的要因も大きく影響します。入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒があると、「しっかり眠れた」という実感は得にくくなります。その意味では、これらの睡眠トラブルを整えることが、熟眠感の向上につながる可能性があります。

寝つきをよくするためにお酒を飲む人もいますが、アルコールは睡眠前半では眠気を誘う一方、後半の睡眠を浅くし、夜間覚醒を増やすことが知られています。特に夜遅い時間の飲酒や寝酒は、睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。

睡眠は体と脳を回復させる重要な時間ですが、睡眠時間が不足していたり、日中のストレスや疲労が大きかったりすると、「眠ったはずなのに回復した感じがしない」と感じることもあります。眠りに過度な期待をかけすぎることは、不安を強め、かえって睡眠の妨げになる場合もあります。

こうした背景のもと、眠りの深さや熟眠感のサポートに着眼点を置いた食品成分の研究も進められています。三菱ガス化学が開発した清酒酵母由来のGSP6株については、臨床研究において熟眠感の改善が報告されています。

清酒酵母GSP6株

酵母は酒や味噌などの発酵食品、パンづくりなどに利用される、私たちの食生活になじみ深い微生物です。酵母にはビタミンやミネラルなどの栄養成分が含まれており、乾燥酵母は健康食品としても利用されています。酵母にはさまざまな株がありますが、清酒に用いられる酵母の一つであるGSP6株は、三菱ガス化学が伝統的な育種方法によって選抜し、独自の培養方法で製造している乾燥酵母粉体です。

三菱ガス化学が実施した臨床試験では、睡眠に不満のある健康な成人68名を対象に、GSP6株を含む食品とプラセボをそれぞれ一定期間摂取して比較しました。その結果、GSP6株を摂取した期間には、眠りの深さや起床時の眠気に改善がみられました。また、夜間に分泌される成長ホルモンの量が増加したことも報告されています13)

清酒酵母GSP6株について詳しく知りたい方は、こちらの特設ページをご覧ください。

医師に相談したほうがよい場合

ここまで、睡眠の悩み別にサポートする食品成分を紹介してきました。しかし、症状によってはセルフケアだけでは十分でない場合もあります。以下のような状態が続いている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

不眠症と考えられる主な目安14)

  • 寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなどの症状がある
  • 十分に眠る時間や環境があるのに眠れない
  • その状態が週に3回以上みられる
  • それが3か月以上続いている
  • 日中の眠気、集中力低下、気分の落ち込みなど、生活への支障が出ている

不眠症の原因や症状は人によってさまざまです。背景に身体の病気(甲状腺機能の異常、睡眠時無呼吸症候群など)や、うつ病·不安障害といった心の病気が関係している場合もあります。また、不眠は心身に影響を及ぼし、生活への支障が強くなると、それ自体がさらにストレスとなって眠りを妨げる悪循環につながることがあります。「つらい」と感じている場合は、一人で抱え込まず、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

参考文献

1) 令和6年国民健康·栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf

2) Yamatsu A, Yamashita Y, Pandharipande T, Maru I, Kim M. Effect of oral γ-aminobutyric acid (GABA) administration on sleep and its absorption in humans. Food Sci Biotechnol. 2016 Apr 30;25(2):547-551. doi: 10.1007/s10068-016-0076-9. 

3) Hepsomali P, Groeger JA, Nishihira J, Scholey A. Effects of Oral Gamma-Aminobutyric Acid (GABA) Administration on Stress and Sleep in Humans: A Systematic Review. Front Neurosci. 2020 Sep 17;14:923. doi: 10.3389/fnins.2020.00923. PMID: 33041752; PMCID: PMC7527439.

4) Spinweber CL. L-tryptophan administered to chronic sleep-onset insomniacs: late-appearing reduction of sleep latency. Psychopharmacology (Berl). 1986;90(2):151-5. doi: 10.1007/BF00181230. PMID: 3097693.

5) Sutanto CN, Loh WW, Kim JE. The impact of tryptophan supplementation on sleep quality: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Nutr Rev. 2022 Jan 10;80(2):306-316. doi: 10.1093/nutrit/nuab027. PMID: 33942088.

6) Ferracioli-Oda E, Qawasmi A, Bloch MH. Meta-analysis: melatonin for the treatment of primary sleep disorders. PLoS One. 2013 May 17;8(5):e63773. doi: 10.1371/journal.pone.0063773. PMID: 23691095; PMCID: PMC3656905.

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