2024年に発生した機能性表示食品による健康被害は、消費者の不安を大きく揺さぶり、社会問題となりました。この問題を受けて、消費者庁は、再発防止に向けた新たな規制を導入しました。
その一つが、製品の安全性と品質を確保するための「GMP」の義務化です。これまで、GMPの導入は企業の自主的な取り組みに委ねられてきましたが、2026年9月からすべての事業者に対して義務化されることになりました。
本記事では、より安全になったサプリメントの製造基準について詳しく解説します。
GMPは製造の安全を守るための基準
GMPはGood Manufacturing Practiceの略で、日本語では「適正製造基準」と訳されます。医薬品や化粧品、健康食品や医療機器などの安全と品質が保たれるように定められた規則とシステムのことです。GMPの細かい内容は国や業界ごとに異なりますが、以下の三原則に従って定められています1)。
GMPの三原則
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 製品の汚染及び品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
これらの三原則を満たすために、従業員の教育・マネジメントや運営方法などのソフト面と、設備や機器の配置などのハード面の指針を示したのがGMPです。
日本では、1980年に厚生省令として「医薬品GMP」が施行されました。1994年には、医薬品GMPに準拠していることが医薬品の製造の許可要件となり、2005年には製造販売の承認を得るためにも医薬品GMPに準拠していることが必要になりました。
一方、食品の製造に関しては、全ての食品等事業者に、食品衛生管理手法(HACCP)に沿った衛生管理を行うことが義務づけられていますが、GMPほど厳しい管理は求められていません。ただし、サプリメントのように一部の成分を濃縮して天然物とは成分割合が異なるカプセルや錠剤については、医薬品と共通する部分も多く、より慎重な扱いが必要です。そのため、日本健康食品規格協会(JIHFS)や日本健康・栄養食品協会(JHFA)が、それぞれ定めた健康食品GMPガイドラインの認証審査を行い、業界の自主的な取り組みを推進しています2)3)。
2024年3月11日には、厚生労働省による「錠剤、カプセル錠剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」が発表されました4)。このときはまだ、大規模な健康被害問題が発覚していなかったため、厚生省の書類には「今後は、事業者が自主的にこのガイドラインに沿って品質の確保を図ることが期待される。」と記されるに留まっていました。
しかし、その後、大規模な機能性表示食品による健康被害問題が起こり、被害の深刻さを受けて消費者庁は、サプリメント形状の機能性表示食品に関してはGMPによる管理と品質確保を義務化する方針を固めました5)。もともと多くの事業者が自主的にGMP基準を守って製造をしていましたが、公的に義務化されたことによって、サプリメント製品の安全性がさらに向上することが期待されます。
健康食品は最終製品だけでなく原料も重要
安全なサプリメントを製造するためには、その製造工程の適切な管理だけでなく、安全な原材料を使うことも重要になってきます。原材料の製造工程に関しても同様にJIHFSやJHFAはGMP認証を設定していますが、原材料がGMP認証を受けているかどうかについては、消費者には見えづらい構造になっている実態があります。
2024年に起きた健康被害では、原料を使って錠剤のサプリメントを製造する協力会社の工場ではGMP認証を取得していましたが、問題が発生した原料を製造している工場は、原材料GMPを取得していませんでした。その場合でも、公表されている消費者庁のデータベースでは、「GMP適合製造所にて製造」と表記されることになります6)。
今回の消費者庁のガイドライン改正でも、原材料についてはGMP認証の義務化はされていません。健康被害を引き起こした製品がGMP認証工場で製造されていたことを考慮すると、製品のGMPと原材料GMPは異なることを消費者自身がよく理解して選択することが必要です。
特に輸入原材料を用いている場合は、原材料の安全性が確かめづらい場合もあります。そのことを問題視したJIHFSは、2024年7月から海外から輸入される原材料に対する「輸入原材料GMP認証」事業をスタートさせました7)。
輸入した原材料を製造ロットごとに国内で分析試験を行うなど、認証を受ける事業者にとっては大変な内容ですが、消費者にとっては輸入原材料GMP認証を受けた製品を選べば、より安全な選択をすることができます。
BioPQQ®は原材料GMP認証を受けた安全な原材料
三菱ガス化学のBioPQQ®はすべて、JIHFSの原材料GMP認証を受けた自社工場で製造しています。また、製造したBioPQQ®は国内だけでなく欧州やアメリカなどでも販売しているため、海外の安全性評価基準の認証も複数受けています。
たとえば、Novel Food(新規食品)として2018年に欧州委員会から承認されるために、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority:EFSA)の厳しい安全性評価をクリアしています。
また2018年には国内で初めてイギリスLGC社が認証しているアンチドーピング認証(インフォームド原材料)を取得しています。これはアスリートにとっての禁止薬物が商品に含まれていないかを確認するプログラムで、製造プロセス・製品ロットまで評価し、基準に達したものしか認証されない、非常に厳しい基準です。
アメリカでも、米国食品医薬品局(Food and Drug Administratio: FDA)によって、新規食品素材として認められていますし、米国連邦規則(Code of Federal Regulations: CFR)とFDAが公開している基準を満たし、食品安全に関する認証制度のSelf GRASを取得しています。
BioPQQ®の原材料としての強みは、三菱ガス化学が自社で研究・製造していることです。そのため、徹底した安全管理を行うことができます。また、BioPQQ®で製品を開発する事業者さまに対して、安全性に関する詳細なデータや開発に必要な知見を提供することができます。
ぜひ、お気軽にお問合せください。
参考
1) 厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/114031/201131008A/201131008A0004.pdf
2) 一般社団法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)
http://www.jihfs.jp/gmp01.html
3) 公益財団法事 日本健康・栄養食品協会(JHFA)
https://www.jhnfa.org/gmp-0.html
4) 厚生労働省 健生食元発0311第2号
https://www.mhlw.go.jp/content/001224734.pdf
5) 健康産業新聞1792B号「夏季特別号」(2024.7.17)
https://www.this.ne.jp/news/17220/
6) NHK NEWS 2024年4月5日20時33分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240405/k10014413721000.html
7) Wellness Daily News 2024/7/31
https://wellness-news.co.jp/posts/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%97%E3%81%9F%E8%BC%B8%E5%85%A5%E5%8E%9F%E6%9D%90%E6%96%99gmp%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E3%80%80%E8%A6%81%E6%B1%82%E4%BA%8B%E9%A0%85%E3%81%AF%EF%BC%9F%E5%AF%A9/