PQQコラム

【研究紹介】PQQは形を変えても効果を発揮する

私たちが口から取り込んだ食物は、体の中で小さく分解されるだけでなく、さまざまな化学反応を経て、細胞で利用しやすい形に変化していきます。そのため、健康食品を選ぶときには、何の食品を摂り入れるかだけでなく、ヒトの体内でどのように変化をするのかを知ることも重要です。

この記事では、BioPQQ®から変化した物質がどのような効果を発揮するのかを調べた2020年の研究をご紹介します。

PQQとアミノ酸が反応してIPQが生成される

IPQ(イミダゾールピロロキノリン)は、PQQとアミノ酸が化学反応して変化した物質です。

アミノ酸はタンパク質の材料で、ヒトを含む哺乳類の血液中には豊富に存在しています。
そのため、摂取したPQQが体内でIPQに変化している可能性が考えられています。

図1の左はPQQの化学構造式です。その右側はIPQ(イミダゾールピロロキノリン)という物質です。
2つの物質はとても良く似ていますが、赤い丸の部分の構造が違っています。

BioPQQ®が脳の機能を維持したり、ミトコンドリアを活性化したりする効果は、多くの研究によって証明されています。(参考:【研究紹介】BioPQQ®の摂取で脳の機能はどう変わるのか)。

では、PQQとIPQで抗酸化作用やミトコンドリアの活性化効果に違いはあるのでしょうか。

この疑問を解消する研究結果が、近畿大学の山田康枝教授らの研究グループによって発表されました1)山田教授らが実験に用いたPQQは、三菱ガス化学のBioPQQ®です
研究の結果、IPQもPQQと同様に、細胞を保護する効果やミトコンドリアを活性化する効果があることが示されました。

いったいどのような研究だったのでしょうか。詳しく見てみましょう。

PQQとIPQの抗酸化能を調べる

呼吸で取り込む酸素の一部は、体内で活性酸素に変化します。
活性酸素は細胞の情報伝達や免疫機能に役に立つ一方で、過剰に産生されると細胞を傷つけ、老化の原因にもなります2)

PQQには、活性酸素から細胞を保護する抗酸化能があることが知られています。
三菱ガス化学が行った研究では、酸化ストレス環境に置かれたラットの記憶力低下を、BioPQQ®の摂取によって抑制できることが示されています(参考:BioPQQ® 研究成果)。

IPQにも抗酸化能が認められるかどうかを調べるため、培養したヒトの神経細胞(SK-N-SH細胞)と、ヒトの肝細胞(HepG2細胞)を使って実験が行われました。

まず、活性酸素に対する効果を調べるために、細胞にPQQとIPQをそれぞれ加え、過酸化水素を投与しました。
過酸化水素は活性酸素の一種で、細胞に障害を与え、細胞を死に至らせます。
グラフの縦軸は細胞の生存率を示しています。横軸はPQQまたはIPQの濃度です。

過酸化酸素(H2O2)が投与されると、細胞の生存率は神経細胞では約40%、肝細胞では約70%に低下しました。
しかし、神経細胞では約40%だった細胞生存率が、100nMのPQQによって、約60%まで回復しました。
肝細胞に対しては、10µM以上のPQQによって細胞生存率は約90%まで回復しましたが、有意差は検出できず、神経細胞に比べると弱い保護効果を示しました(図2)。

一方、IPQの場合は500µMという高い濃度を加えても、約35%だった神経細胞の細胞生存率は約40%までしか回復しませんでした。
また、肝細胞では、約60%だった細胞生存率が50µMのIPQで約80%に回復したものの、有意差は見出せませんでした(図3)。

これらの結果から、PQQは活性酸素から細胞を保護しますが、IPQには活性酸素から細胞を保護する効果はほとんどないことがわかりました。

PQQもIPQも神経毒から細胞を保護する

次に、PQQとIPQが神経毒から細胞を保護する効果があるかどうかを調べました。
PQQはこれまでの研究で動物にパーキンソン病を誘発する神経毒6-OHDAから細胞を保護する効果があることが知られています3)

神経細胞にPQQとIPQをそれぞれ加え、神経毒6-OHDAに曝して細胞の生存率を調べました。
図4は、PQQの結果です。

神経毒(6-OHDA)を投与すると、50μMで約75%、100μMで約50%まで細胞の生存率は低下してしまいます。
しかし、ここにPQQが存在していると、生存率が上がることがわかりました。

同様の実験をIPQで行った結果が図5です。IPQは神経毒が50µMのときは、あまり変化はありませんが、100µMという高濃度の神経毒によって生存率が減った細胞を保護する効果が見られました(図5)。

このことから、BioPQQ®、IPQともに細胞を神経毒から保護する効果があることが確かめられました。

PQQもIPQもミトコンドリア合成を促進する

ミトコンドリアはPGC-1αという物質が活性化されると、合成が始まります(参考記事:ミトコンドリアを増やす3つの方法)。

PQQとIPQがミトコンドリアに与える影響を調べるため、細胞にPQQもしくはIPQを添加し、24時間後に、PGC-1αの量を解析しました。その結果が図6です。

この実験から、PQQ、IPQいずれを添加した細胞でも、ミトコンドリア生成を促進するPGC-1αの発現量の有意な増加が認められました。

またミトコンドリアの量の指標となるタンパク質(COX4/1)の量も、PQQとIPQの投与によって増加しました。

IPQでもPQQと同様に高齢のマウスの記憶力が向上

ここまでは細胞を使った実験でしたが、研究グループは、高齢のマウスにBioPQQ®またはIPQを摂取させ、記憶学習能力に対する影響についても調べています。

用いられたのは「ステップスルーテスト」という方法です。
ステップスルーテスト用のケージは明室と暗室から構成されており、2室のあいだはドアで仕切られています。

まずマウスを明室に入れて十分慣れさせてから仕切りのドアを開けると、暗いところを好む習性があるマウスは暗室へ入ろうとします。
そのタイミングで、床から電気ショックを与えます。これはマウスにとって非常に不快な体験です。
一定の時間のあとに同じ操作を繰り返すと、電気ショックの不快さを記憶しているマウスは、仕切りのドアが開いてもなかなか暗室に入ろうとしません。
1回目に比べて暗室に入るまでの時間が長くなるのです。暗室に入るまでの時間を測定すれば、記憶が保持されているかどうかがわかります。

このステップスルー型受動回避実験を、PQQおよびIPQを与えた高齢のマウスに行いました。

1週間 PQQおよびIPQを投与した後にステップスルーテストを行うと、何も投与しなかったグループ(コントロール)に比べ、PQQ投与グループは約3倍、IPQ投与グループは約2倍、暗室へ入るまでの時間が長くなりました。
つまり、PQQおよびIPQを摂取することにより、高齢マウスの記憶学習能力が向上したのです(図7)

これらの研究結果から、抗酸化作用を除いて、IPQにもPQQとほぼ同じ生物活性があることがわかりました。
今回の研究はすべてBioPQQ®を用いて行なわれたことから、BioPQQ®の健康をサポートする効果は、体内でIPQに変化していたとしても失われることがないと言えそうです。

BioPQQ®の健康に対する効果については、さまざまな研究者が検証を重ね、多くの論文が発表されています。
今後、詳しいメカニズムも解明されれば、他の成分と合わせるなど、さらに効果的な摂取方法もわかってくるかもしれません。

このコラムでもまたご紹介させていただきます。ぜひ、今後の研究成果にもご注目ください。

参考

1) Yasue Yamada,  Kazuya Nishii, Koji Kuwata, Masashi Nakamichi, Kei Nakanishi, Atsushi Sugimoto, Kazuto Ikemoto(2020)Effects of pyrroloquinoline quinone and imidazole pyrroloquinoline on biological activities and neural functions. Heliyon 6, e03240

2) 厚生労働省 e-ヘルスネット 活性酸素と酸化ストレス
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html

3) Hara H., Hiramatsu H., Adachi T. Pyrroloquinoline quinone is a potent neuroprotective nutrient against 6-hydroxydopamine-induced neurotoxicity. Neurochem. Res. 2007;32(3):489–495.

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