BioPQQ®を摂取することで期待される効果に、認知機能の維持や抗酸化作用などがありますが、近年のマウスの研究によって、脂肪の蓄積を抑制し、肥満を改善する可能性があることが明らかになってきました。
この記事では、BioPQQ®と脂肪蓄積抑制の関係について調べた研究をご紹介します。
ミトコンドリアは脂肪の代謝にも関わっている
肥満は、さまざまな病気の引き金となります1)。
特に腹筋の内側や腸などの周りにつく内臓脂肪が過度に蓄積すると、二型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の発症リスクが高まります。
また、肥満は炎症やがんなどにも関わっています。
ミトコンドリアは糖から細胞のエネルギーを作り出すだけでなく、脂肪からエネルギーを生産するときにも重要な働きをしています。
また、脂肪を分解する褐色脂肪細胞にミトコンドリアが多く存在しています。
そこで三菱ガス化学は、大阪府立大学との共同研究で、ミトコンドリアを活性化するBioPQQ®が、脂肪の蓄積に対してどのような影響を与えるのかをマウスを使って調べました。
マウスは普通に生活していると肥満になることはありませんので、肥満の実験を行うために、脂肪の多いエサ(高脂肪食)を与えて飼育しました。
10匹のマウスには高脂肪食を与え、別の10匹には高脂肪食にBioPQQ®を混ぜたエサを与えます。
さらに、他の5匹には比較のために通常のエサを与えました。
それぞれのエサで飼育を6週間続け、実験期間中は週に2回体重を測定しました。
マウスが食べたエサの量を知るために、残ったエサの重さからマウス1匹当たりの摂取量を計算したところ、マウスの食べたエサの量はどのグループでも同じでした。
BioPQQ®摂取マウスは体型をほぼ維持
6週間後、マウスの体重を測定してみると、高脂肪食を摂取したグループは通常食のグループに比べると大きく増加していることがわかりました。
これはBioPQQ®を摂取していても、していなくても、同様の結果でした。
体重については、高脂肪食群と高脂肪食+PQQ群が、通常食群よりも増加していましたが、高脂肪食と高脂肪食+PQQ群の体重は大きな差はありませんでした。
ところが、体型に違いがありました。
高脂肪食+BioPQQ®グループのマウスの体型は、体重に大きな差がないにもかかわらず、高脂肪食グループのマウスよりほっそりしていたのです。
体型の違いが出た理由を知るために、それぞれのグループのマウスの脂肪の量を測定しました。
その結果、高脂肪食グループの脂肪量は通常食グループの2倍多かったのに対し、高脂肪食+BioPQQ®グループの脂肪量は通常食グループの1.5倍に抑えられていることがわかりました。
さらに、マウスの体内の様子を見ることができる小さなCTスキャンで、実際の脂肪や筋肉の様子を撮影してみると、腹部の内臓脂肪の増加が抑えられていることも確認できました。
マウスの下半身のCT画像を見ると、BioPQQ®を摂取したグループは摂取していないグループに比べて筋肉量が多いことがわかりました。
脂肪量が異なるにもかかわらず高脂肪食+BioPQQ®グループと高脂肪食グループの体重が変わらなかったのは、高脂肪食+BioPQQ®グループの筋肉量が維持されているためだと考えられます。
高脂肪食を食べ続けたマウスの健康状態はどう変化したでしょうか。
高脂肪食の摂取は肝障害を引き起こす原因ともなりますが、マウスの血液を採取して検査をした結果、BioPQQ®を摂取したグループは、肝障害が起きている可能性を示唆する数値(AST、ALT)が低下していました。
このことから、BioPQQ®が高脂肪食の摂取による肝障害を抑制する可能性が示されました。
さらにコレステロール値についても、BioPQQ®の摂取で抑制される傾向がみられました。
BioPQQ®は脂肪細胞の脂肪蓄積を抑制する
BioPQQ®の体内での働きをさらに詳しく知るために、細胞を使った実験も行いました。
実験に使用したのは、肥満の実験に使われる標準的な脂肪細胞です。
脂肪細胞は細胞内にある「脂肪滴」という構造物に脂肪を蓄積する細胞です。
この脂肪細胞を、濃度を変えたBioPQQ®で48時間処理したあと、細胞内の変化を調べました。
比較のために、BioPQQ®を加えない脂肪細胞も用意しました。
特殊な色素で脂肪細胞内の脂肪を染色して観察すると、BioPQQ®の濃度が高いほど脂肪滴に含まれている脂肪の量が減少していることがわかりました。
また、脂肪滴の直径も、BioPQQ®の濃度が高くなるほど、小さくなることがわかりました。
さらに、細胞内で脂肪の合成や代謝に深くかかわっている一連のタンパク質を取り出して、BioPQQ®に影響を受けているかどうかを調べたところ、脂肪の合成が抑制されやすくなっていることがわかりました。
肥満を解消するために重要なのは、適度な運動と健康な食習慣です。
しかし、ストレスの多い現代社会では、わかっていても健康状態を改善する時間が取れない方も多いでしょう。
BioPQQ®がヒトの脂肪蓄積に対しても効果を発揮できれば、私たちの健康をサポートする強力な味方になるかもしれません。
三菱ガス化学では、BioPQQ®のヒトへの効果について、さらなる研究を続けてまいります。
参考
記事内の実験データすべて
Nur Syafiqah Mohamad Ishak, Ikemoto K, Kikuchi M, Ogawa M, Akutagawa K, Akagawa M (2021) Pyrroloquinoline Quinone Attenuates Fat Accumulation in Obese Mice Fed with a High-Fat Diet, Daphnia magna Supplied with a High Amount of Food, and 3T3-L1 Adipocytes, ACS Food Sci. Technol. 1, 1979–1989
1) Tsatsoulis, A., Paschou, S.A. Metabolically Healthy Obesity: Criteria, Epidemiology, Controversies, and Consequences. Curr Obes Rep 9, 109–120 (2020).
https://doi.org/10.1007/s13679-020-00375-0